警察庁は3日、暴対法改正や暴排条例で暴力団組織が縮小する中、特殊詐欺などで暗躍するピラミッド構造を持たない準暴力団(通称・半グレ)らを、実態に合わせてより広い概念の「匿名・流動型犯罪グループ(通称・トクリュウ)」と新たに定義するなどして対策に着手。従来の犯罪組織とは異なる集団の台頭やネット犯罪など、社会の変化に対応するため組織改革に乗り出し、全国の警察本部へ改革を指示した。
警察庁
「闇バイト」や「特殊詐欺」で暗躍し、離合集散を繰り返す「匿名・流動型犯罪グループ」について、47都道府県警の規模や地域性に応じて専従の係や班、担当を置いて実態解明を開始。ボーダレスの特殊詐欺被害撲滅に向け、大都市を管轄する一部の警察本部にその他の警察本部が捜査を嘱託する体制を構築する。
サイバー空間の捜査では、専門性の高い警察官(捜査員)に加えて技官(技術者)の育成を強化する。具体的には技官の能力を高める(スキルアップ)だけでなく、専門家として役職も昇格(キャリアアップ)するシステムを確立する。また政府が推し進め先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)でも重要課題とされた「経済安全保障」確保のため、一層の語学力強化を主な改革の大きな柱に据えた。さらに安倍晋三元首相や岸田文雄首相の襲撃で注目が高まる個人が組織に属さず単独でテロを行う「ローンオフェンダー」の情報収集を、警備部門を中心に集約する方針。
ほかに捜査の合理化も大きなテーマとし、「パパ活」などと称される少女買春や違法薬物売買について各警察本部や課、署などで個々に行っている「サイバーパトロール」の一元化への検討を進めるとともに、署や交番について、人口減少などの変化に応じて複数の署などの部署で役割を分担するといった人員の効率的配置を推進する。
AI(人工知能)やドローン(無人機)など先端技術の導入促進とは別に、交通事故の捜査書類の簡素化を進め、件数が極めて多いが形式的で過失の程度が軽微なため不起訴(起訴猶予など)となるケースが相次いできた業務上過失事件の処理を合理化するため法務省と調整に着手。空き巣など窃盗犯の余罪について実施している「引き当たり」と呼ばれる実地捜査のリモート化も具体的に導入する。
警察庁は外形的な機構の改革ではなく「実態重視の運営法の『抜本』改革。時代の変革で生じた捜査や対策の『空白』を埋める」とし、「改革の範囲や具体性は過去に例のない規模」としている。