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「元暴5年条項」口座開設拒否は差別 元暴力団組員が「みずほ銀行」を提訴

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 水戸地裁に5月26日付で、元暴力団組員で現在は建設会社勤務の男性(50代)=茨城県内在住=が、暴力団離脱後5年以上たっても口座開設を拒否されたのは不当差別だとして、みずほフィナンシャルグループ傘下の都市銀行で、3大メガバンクの一つ「みずほ銀行」を相手取り、10万円の損害賠償を求めて4月18日に水戸簡裁に起こした訴訟が移管された。

水戸地方裁判所・水戸簡易裁判所

水戸簡易裁判所

 原告の男性は2017年5月1日に県警の支援を受けて暴力団を離脱し、今年4月12日に給与の振込先として、みずほ銀行水戸支店で普通預金口座の開設を申し込んだが、銀行側からは「総合的判断」と説明され口座開設を拒否された。男性側は口座開設ができないのは「かつて暴力団に所属していたことを理由とするのは明らか」と主張、経歴は「自らの意思によって克服することのできない属性」で、口座開設の拒否は「就労の機会を奪い、社会復帰を阻害する不合理な差別」と訴えた。男性はみずほ銀行以外にも複数の地方銀行に口座開設を断られ、子どもの給食費などは妻の口座から引き落としている。

 全国の金融機関は政府の指針に基づき、暴力団組員らのデータベースを整備していて、みずほ銀行に限らず、多くの金融機関では口座開設の申し込みを受けると、自社データベースで過去にさかのぼって反社会的勢力への所属の有無を確認して取引から排除している。みずほ銀行も暴力団を離脱してから「5年を経過しない者」なども「反社会的勢力」として取引を拒否する事を規定していて、多くの金融機関は、離脱後の5年間は現役組員同様に扱う「元暴5年条項」を設けている。

 暴力団からの離脱と社会復帰を促す活動は全国で進められているが、社会的表面上は離脱を装い、「半グレ」として特殊詐欺や強盗事件に関与する元組員も相当数に上っていて、警察でも、正規の組員より半グレ化した元組員の現状把握は困難となっている。

 金融機関でも、怪しい人は現場判断で全て断ると言いきり、そうした過去を完全に消すのは容易ではなく「暴力団をやめたからといって更生したとは限らない」と警戒感を隠さない。「元暴5年条項」は一つの基準に過ぎないという。

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